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平成23年度Lectureship Award受賞者の決定

平成23年度の第14回Lectureship Awardに推薦された研究者について慎重に審査を行った結果、下記の研究者が出席委員全員の合意で承認された。また同日行われた役員会において受賞者候補として承認されたので、ここに報告する。

第14回Lectureship Award 受賞者

Calum J. Drummond 教授 (Chief at CSIRO Materials Science and Engineering)

Hans-Jurgen Butt 教授(Director at the Max-Planck-Institute for Polymer Research Polymer Physics, Interface Science)

選考理由

Drummond 教授(1960年生)は、オーストラリアの国立研究所CSIROの材料科学・材料工学部門(構成員700 名)のChiefとして活躍しながら、研究グループを率いて、界面活性剤の自己組織体を中心として、医用応用や電池まで、幅広いナノ材料への展開を進めているオーストラリアコロイドおよび界面化学分野のリーダーの一人である。 Drummond 博士はメルボルン大学理学部物理化学科で博士課程を修了後、同学科助手、オーストラリア国立大学応用数学科Queen Elizabeth II Fellow、CSIROの研究員・主任研究者などを経て、現職に至っている。一貫して界面活性剤の評価,材料科学とそれらの実用化への展開を中心とする研究を行ってきた。1980年代の界面活性剤集合系を分光学的に研究するための分子プローブの研究にはじまり、コロイドプローブ原子間力顕微鏡による相互作用の研究、イオン性液体中のナノ構造形成の研究などの両親媒性分子集合体の基礎および応用研究の他,医用応用や世界最高性能を持つリチウムイオン電池の開発などが目覚ましく、数々の受賞に輝いた。最近はイオン液体中での界面活性剤の集合形態について小角・広角散乱などの物理化学的手法を駆使して、さらなる構造制御の可能性を拓くとともに、薬物運搬体などへの応用にも展開している。両親媒性ブロックポリマーによる薬物運搬やMRIイメージング試薬の分子設計についても新しい成果を挙げている。 これらの業績により、2006年にはオーストラリア化学会の物理化学部会メダル、2005年には同グリーンケミストリー挑戦賞ならびにWorld Economy ForumよりGlobal Technology Pioneer賞、2004年にはオーストラリア化学会工業化学部会R. K. Murphy Medalなど、数々の賞を授賞している。 以上のように,Drummond教授は、物理化学的な基礎の上に新しい自己組織体に基づく材料科学を拓き、当分野に新しい方向を提示しておられ, 本部会のLectureship Awardを受賞するにふさわしいと認める。

Butt教授(1961年生)は,ドイツのマックス・プランク研究所(Mainz)の高分子研究のDirectorとして活躍されており、本賞受賞者であるMohwald教授からドイツのコロイド学会の会長を引き継いだ方で,今後のドイツのコロイド部門を代表する研究者です。また,日本の研究者との親交も厚く,日本から多くのコロイド研究者が氏の元を訪ねて薫陶を受けています。 Butt教授は、1980-1986 年にProf. Dr. H. Spitzer教授から物理学を学び、マックス・プランク研究所でバクテリアロドプシンの研究を行い、1989-1990 年にUCSBで原子間力顕微鏡を学んでいる。フランクフルトに戻ったのち、1996 年にC3教授、2000 年にC4教授となり、2002 年からは現職に就いている。Butt 教授は1991 年にコロイドプローブ原子間力顕微鏡を考案し、液中の界面力の測定に展開した。その後,AFMを用いた表面力の一般的な方法として現在幅広く用いられている。また,Butt教授はAFMを用いたリソグラフィー法を考案し、後にこの方法は、Prof. MirkinらによってDip-Pen Lithographyに応用された。さらにButt教授は、AFMが固体の表面張力の測定に利用できることに気付き、マイクロメカニカルセンサーに応用した。このように、Butt 教授の初期の研究は、AFMという新技術を界面コロイド分野の新しいツールとしての展開を目指したものである。その後、Butt 教授は、AFMを用いた表面力の研究に興味を持ち、高分子材料や脂質二分子膜などの研究を展開させた。この研究により、微粒子の接着力や摩擦力などを定量的に評価することが可能となり、コロイドや粉体の応用分野に大きな貢献を果たした。 以上のように,Butt教授は、界面・コロイド分野において画期的な技術を開拓しつつ,基礎研究のみならず応用研究にまで展開して大きなインパクトを与え続けており,本部会のLectureship Awardを受賞するにふさわしいと認める。

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