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平成25年度科学奨励賞および技術奨励賞受賞者の決定

当部会の平成25年度 Lectureship Award、部会奨励賞(科学奨励賞,技術奨励賞)の選考委員会が,平成25年1月25日に化学会館にて開催され,推薦された候補者(Lectureship Award1名、科学奨励賞7名,技術奨励賞2名)について慎重に審査を行った結果,下記のとおりの方々が出席委員全員の合意で選出されました。また同日行われた部会役員会において,受賞者として承認されたのでここに報告します。

第12回 科学奨励賞 受賞者

藤井秀司 氏  大阪工業大学工学部応用化学科
「微粒子の界面吸着現象を利用した液液、気液分散系の安定化」

松下祥子 氏  東京工業大学大学院理工学研究科 材料工学専攻
「近接場光学への応用を念頭にしたコロイド結晶研究」

第10回 技術奨励賞 受賞者

秋山恵里 氏  花王株式会社 ビューティケア研究センター
「水溶性両親媒多糖の増粘特性と乳化機構」

選考理由

藤井秀司氏は、界面・コロイド化学および高分子化学を学術基盤とし、機能性高分子微粒子の創出、評価および分散体の安定化剤としての応用利用についての研究を精力的かつ包括的に展開している。特に同氏が、高分子微粒子の粒子形態での新規利用法を提起する立場から、高分子微粒子の界面吸着現象を利用した液液分散体(エマルション)、気液分散体(泡、リキッドマーブル、 ドライリキッド)の安定化を試みる新しい研究分野を開拓していること、界面に吸着した粒子を利用し、高分子が有するフィルム形成能、刺激応答性を活かした新規機能性材料創出法の提案も行っていること、などが高く評価された。
同氏の一連の成果は、100報近くの査読付き学術論文で発表され、国際学会や海外の研究グループでの講演にも多く招待されるなど、国内外で高く評価されている。また、6件が新聞記事として成果が紹介されるなど、研究成果の社会へのフィードバックにも貢献している。同氏は現在、コロイドおよび界面化学に重心を置いて研究を展開し、第63回コロイドおよび界面化学討論会では、一般シンポジウム「分散系の新デザイン:サーファクタントフリー分散系と界面吸着粒子の科学と工学」を企画提案者代表として提案・運営するなど、今後も積極的に学会活動に参加する強い意志を示している。
今後も当該分野の研究をますます発展させ、またコロイドおよび界面化学部会活動においても先導的役割をはたしていただくことを期待して、ここに推薦するものである。

松下祥子氏は、自己集積および自己組織化を巧みに活用した発光素子、太陽電池、新しい概念に基づくセンシング材料の創製を目指して、近年では特にコロイド結晶や人工オパールなどの微粒子自己集積体の研究を精力的に展開している。中でもサブマイクロ粒径の微粒子集積体であるコロイド結晶がフォトニック結晶に応用できることをいち早く見出し、コロイド結晶内部での光伝搬特性の解明や自立型単層コロイド結晶を用いた光モードの確認などによってコロイド結晶とフォトニック結晶理論の橋渡しをしたなど業績、世界で初めて微粒子径が単分散である逆オパールを創製し、その表面粗さが2nm以下のフォトニック結晶の光学特性を近接場光学の各モードから議論した業績、などが高く評価された。また直径100nmのナノシリング構造の作成や金属―誘電体プラズモニクスデバイスの作製など、近接場光学を実験的に後押しし実用化へ導く新しいコロイド材料の開発も期待される。
同氏の研究成果は、50報以上の論文としてChemComm、J.Apply.Phys.、Langmuirなどの国際誌に公表され、多くの著書や総説としても注目を浴びている。またコロイド及び界面化学討論会、NCSSやIACISなどの関連国際会議でも継続的に発表し、女性研究者・教育者としての立場からの著書や総説も多数出版している。同氏は今後も本部会活動に積極的に参加する意思を示している。
今後も当該分野の研究をますます発展させ、またコロイドおよび界面化学部会活動においても先導的役割をはたしていただくことを期待して、ここに推薦するものである。

秋山恵里氏は、花王株式会社研究所に所属し、化粧品およびメイクアップ化粧品の商品開発研究を担当しつつ、化粧品およびトイレタリー製品の製剤に関する基盤技術開発研究を担当している。特に同氏が、水溶性多糖類の一種であるヒドロキシエチルセルロースに疎水基と親水基の両方を付与した新規な両親媒性高分子と疎水性界面活性剤とを組み合わせた新しい乳化技術を開発していること、しかも高乳化機構の解明という基礎研究から商品への実用化まで一貫したものとなっていること、さらにスキンケア有効製剤、メイクアップ化粧料として数多くの知財権を獲得し、実際の製品へ広く応用されて産業科学技術の発展へ大きく貢献していること、などが高く評価された。
同氏の当該研究成果は、「水溶性両親媒多糖の増粘特性と乳化機構」という基礎研究として興味深い新事実を提供しており、コロイドおよび界面化学討論会や高分子学会、化粧品技術者会などの関連学会、NCSS(Chiba)などの国際学会で発表されているとともに、J. Colloid Interface Sci.誌を始めとする国際誌にも多く掲載されている。またIACIS(Sendai)では座長や学術展示での小学生向けの授業の指導補助も行うなど、当部会への貢献度も大きい。
今後も当該分野の研究をますます発展させて産業科学技術の発展に大きな寄与をしていただくこと、またコロイドおよび界面化学部会活動においても先導的役割をはたしていただくことを期待して、ここに推薦するものである。

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